組織内サイレントマイノリティ

声を上げられない組織内少数派

なぜ「雇用の安定」ではなく「キャリアの安定」を求めていくべきなのか

令和元年4月、ある中堅大学の大学1年生を対象とした授業での出来事。将来なりたい職業について手を挙げてもらいました。「公務員」に9割の学生が手を挙がりました。
令和元年に大学1年生とはZ 世代(1990年後半から2000年生まれ)であり、その世代の特徴として起業家志向が高いといわれています。また将来において前途洋々といわれた世代と言われていますが、目の当たりにする光景は保守的だなと感じました。

「公務員」になれなかった場合、多くの学生さんが希望する職種は「銀行員」。こちらは全体の8割程でした。「公務員」「銀行員」は圧倒的人気業種。素晴らしい職種ではありますが、、AIやロボットによって「消える職種」といわれています。そこで講義中にそのことを伝えると、ほとんどの学生が知らないとのことでした。授業終了後のアンケートに「困惑している」「不安になった」「そんなはずがない」と色々書いてありましたが、「親から聞いている話と違う」というコメントに「おやっ」と思いました。

次の授業では「皆さんの親御さんから働くこと、就職することについて教えてください」と聞きました。
『親からは「安定」こそが最も大切であり、その点で「公務員」「銀行員」が一番良いと聞いています』とのことでした。
そこで「本当に安定しているのですか?」と聞いてみるとキョトンとしてこちらを見ていました。
「雇われ続けていればそれでいいのですか?」「全然やりたくない仕事でも雇われ続けるために我慢できますか?」と問うと答えることができませんでした。

「安定」を求めていることは全く問題ありません。「安定」は「公務員」「銀行員」になれば満たされると思考停止していることです。そういったことでは例え「公務員」「銀行員」になれたとしても日々必死で働いている方々の足手まといになるだけです。その結果、本人にとっても望ましくない未来を迎えるだけです。組織と働く人双方とも不幸になるだけです。

私は学生さんに「雇用の安定」ではなく「キャリアの安定」を求めてくださいと申し上げています。例えば地方公務員の仕事は、地域やそこに住む住民に対して貢献する仕事をしています。その地域に住む人々が、平和で安全な生活を送れるよう、生活環境を整えるための様々な業務を行っています。
そこで私は「誰に対してどのように安全な生活を送ってもらうのか、どういう生活環境を提供すれば住み続けてくれるのか考えてみてください。」と問います。
そうすると学生さんから「小さい子供が好きだから保育分野の仕事」「車椅子の方や障害を持った人が安全に暮らしやすくしたい」「おじいちゃん、おばあちゃんの笑顔が見たい」「片親で育ったので片親世帯のために」と色々な意見が出てきます。

そこから其々が興味ある分野について深く掘り下げて実証研究してもらいます。深く掘り下げていくと色々な団体やその分野で発信している人が見つかります。また、それらの方々からレポートや話しを訊くと、その周辺の分野も見聞きし、新たなる興味が湧き、取り組みたくなります。それらが何回も重なり合うと「公務員」は一つの手段ということになります。
興味ある分野の人たちから見聞きし、行動し、発信し、それを元にまた新たなる色々な人が集まってきて協働していくという好循環が生まれます。そうなれば入社先もご本人もウィンウィンになるでしょう。

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